何故、安倍総理は続投するのか
毎日新聞の8月4、5両日における、電話による全国世論調査で、安倍内閣の支持率は22%と、昨年9月の政権発足以来初めて3割を切り最低を更新した。不支持は65%で発足以来最多。政党支持率は自民党が17%で55年の結党以来2番目に低く、民主党は33%で98年4月の結党以来最高で、政府・与党には参院選惨敗を反映した厳しい結果となった。安倍晋三首相の続投表明に対しては「辞めるべきだ」が56%で、「辞める必要はない」の41%を上回った。 こうした世論調査に一喜一憂するものではないが、私は安倍総理が何故、続投するのか、その説明をもう少し詳しくする必要があると思う。選挙開票日の翌日、7月30日、安倍総理は、どうも説明が不十分なまま続投の意志表明をしてしまったことが、その後の厳しい世論調査の結果になってしまったと考えられる。8月2日付のメールマガジンでも、教育再生や公務員制度改革、新成長戦略の推進、地域の活性化・再生、地球環境問題の解決に向けたイニシアティブ、アジア外交の再構築、憲法改正に向けた取組みを挙げ、改革への流れをここで止めるわけにはいかないと続投の意志を説明しているが、もう少し、私は大きな政治の方向性を示すべきであると思う。 私なりに安倍総理が続投する理由として思っているポイントがある。それは、小泉前政権から継承している財政再建路線と、小さな政府、官から民への政治の大きな方向性だ。2007年3月末の国債・借入の残高は834兆円。国民一人当たりに対し653万円の負担が必要となる。このような先進国でも飛び抜けた財政赤字を抱えながら、自民党の中でさえ、参議院選挙の29ある一人区の敗北(6勝23敗)を受け、地方出身の議員の中から地方へのばらまきの議論が台頭してきている。しかし、小泉前首相の「米百俵」の精神を破棄してしまったら、小沢民主党と自民党の違いはなくなり、社会保護主義的な大きな政府を目指すことになり、自民党が政権を担おうが、民主党が担おうが変わらないことになる。小沢民主党代表は、かつて、自民党幹事長の時代、著書「日本改造計画」の中で、自己責任を前提とした自由主義、小さな政府を掲げていたにもかかわらず、選挙目当て、党利党略を優先し、大きな政治の方向性を180度転換し、競争社会を否定し、社会主義的な大きな政府となる政策を掲げているが、これでは、上記の債務残高を見ての通り、早晩、日本の財政は破綻してしまう。そうではなく、将来に負担を先送りするのではない政策、行財政改革を推し進めることで未来を切り開く姿勢を引き続き鮮明にしなければならない。私は、地方が苦しいのなら、財政規律(2011年度中のプライマリーバランスの一致)を維持しつつ、ある期間(3年程度)、地方にお金を廻すことは、特別会計を取り崩すことで可能であると考える。例えば、現在、100兆円規模の外為特別会計において、ドル円の金利差で、年間3兆円近くの利益をあげているが、その内1.6兆円のみ一般会計へ組み入れているだけで、これを3年程度の期間、もう1兆円、一般会計に組み入れることで、地方へ予算を廻すことは可能だ。もちろん、ばらまきとの批判を受けない仕組みを考える必要がある。例えば、地方分権を先取りする形になるが、地方公務員の人員の圧縮か給与の圧縮を図り、その結果で公務員の人件費10%カットをした都道府県には予算を廻し、独自にその資金を、必要な公共事業に利用するなり、高齢者の医療費に廻すなりすることを認めるといった方法で、行政改革を推し進めるための交付金ということが考えられるのではないか。 憲法改正についても、安倍総理はその必要性の理由を、もっと丁寧に説明すべきである。アメリカに与えられた憲法だから、自民党の党是が自主憲法の成立だからでは、国民の共感は得られない。地方分権を推進し、税源移譲を進めることで地方の活性化を図るために、中央政府の役割を限定するために、憲法の統治の部分を改める必要があるとか、衆参のねじれが生じたから言うわけではないが、参議院の役割を限定し、衆参議員の定数を削減し、議会のスリム化を進めるために憲法改正をおこなうといった小さな政府への政治的な方向性から憲法改正の必要性があるといった理由なら、私は国民の納得も得られるのではないかと考える。また、憲法9条2項については、海外での支援活動を行う自衛隊が、集団的自衛権の問題から、充分な自衛のための装備を用意出来ないため危険であることや、海外での自衛隊の活動を行うために、いちいち特別措置法を制定しなければならないといった理由から2項見直しの根拠はあるものの、2項があるから、自衛隊員の生命の危険が高いイラクでの治安維持活動に参加出来ないという、事実もある訳であり、日米安保により安全保障を確保している日本が、2項の見直しを行うと、アメリカの要請で、治安維持活動に無理矢理駆り出される危険性も高く、充分な議論が必要であることは言うまでもなく、憲法改正を安倍政権の継続の理由にするには、もっと日本が国際社会の一員としての役割、そして日本の安全保障政策の為にも踏み込んだ説明が必要である。 今回の参院選で、憲法改正反対、9条維持を全面的に掲げた共産党、社民党は議席を減らしたことからも、国民の中でも踏み込んだ議論の必要性は十分感じられる。社会保障制度の抜本的見直しについては、安倍総理は続投の理由の中で詳しく言及していないが、安倍政権継続の理由として、社会保障制度の抜本的見直しを2年間程度で行うことを示すべきだと思う。年金をはじめ、医療、介護についての現行制度の継続について、国民の不信・不安がある以上、国会での議論を通じて、国民の信頼の得られる社会保障制度を確立するとの強い意志を続投の理由として表明することが必要だ。新内閣が、8月末にも組閣される予定であるが、新内閣の役割について、則ち、安倍総理の続投の理由について、再度詳しい説明の出来る機会が来る。 もし、その説明が国民の納得のいくものでなければ、安倍新内閣は、初めから躓くことになる。8月6日(月)の日経新聞朝刊のコラムで、政治評論家の田勢康弘さんが、安倍総理のメルマガの続投理由を痛烈に批判し、最後に、“選挙の結果について党内で議論したり、場合によっては首相が責任を取ったりすることは決して「政治の空白」ではない。このような結果を突きつけた有権者の立場から見れば、ほとんど議論もなしに続投を決めてしまい、政策は支持されていると勝手に解釈されることのほうが、よほど「政治の空白」だ。首相がていねいに説明すればするほど、伝わってくるものがないというのはそういうわけだろうか。一度切れた信頼の糸をつなぐのは、改造人事などでは不可能だ。首相自身がまず、敗北はおのれの指導者としての決断、指導力、うつろな言葉にもあるということを自覚しなければならない”と切り捨てているが、安倍総理の続投の理由を、うつろな言葉と批判されず、明確な言葉で、新内閣で国益の為に何をするかの説明することを、安倍総理には是非行って頂きたい。
8月 8, 2007 経済・政治・国際 | Permalink
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